「名俳句一〇〇〇」(佐川和夫篇)

1000枚の風景画の展覧会

「名俳句一〇〇〇」(佐川和夫篇)
 ぶんりき文庫

前回、「部活で俳句」を
取り上げた勢いで、
もう一冊俳句本を紹介してしまいます。
「俳句なんて」と思うなかれ。
詩集同様、お気に入りの一冊を
気が向いたときに
手にとって眺めるだけで、
少しずつその良さが
わかってくるのですから。

本書の特徴の第一は、
解説が全くないということです。
「部活で俳句」のように、
解説と照らし合わせながら
俳句を味わうのもいいのですが、
解説のない中で、
自分の想像力と読解力を駆使して
味わうのもまた楽しいものです。
本来、俳句とは
自由につくられたものなのですから、
読み手にも自由に味わう権利が
あるはずです。

特徴の第二は、
作家別ではなく、季節ごとに
千の作品が並べられていることです。
俳句を味わいながら、四季を味わう。
俳句によって描かれた四季の情景を
眺めて回っている感覚を
楽しむことができます。
1000枚の風景画の展覧会に
足を運んでいるような気持ちに
させられます。

特徴の第三は、
もちろん文庫本であるため、
手軽に楽しめるということです。
これまで詩集や句集は、
ハードカバーの立派なものしか
なかったような気がしています。
本は、やはり文庫本に限ります。

詩集は何度か取り上げた
「ハルキ文庫」から、
装丁も立派なものが出版されていて、
文庫版詩集の普及に
一役買っていますが、
文庫版の句集は
なかなか見当たりません。
私の所有している句集の文庫本も、
種田山頭火の「山頭火句集1」のほかは
本書一冊です。
山頭火は春陽堂の山頭火文庫、
本書は彩図社のいちりき文庫、
どちらもあまり聞くことのない
マニアックな文庫です。
ハルキ文庫か光文社文庫あたりで、
もっといろいろな句集を
出してくれないものかと、
いつも考えてしまいます。
それとも出版しても売れないから
出版社が二の足を
踏んでいるのでしょうか。
いや、そもそも句集なるものが
そんなに存在しないのでしょうか。

「イギリスに滞在したことのある知人が、
日本の俳句について
現地の学生から説明をせまられ、
冷や汗を流した」という話を
何かの本で読んだことがあります。
日本人として生まれてきたのであれば、
俳句について
少しでも理解しておくべきでしょう。

中学生そして
高校生に薦めたい一冊です。
いや、大人のあなたにもぜひ薦めたい
一冊です。
家庭の本棚にさりげなくこの一冊、
勉強になるはずです。

(2020.3.25)

ぽもさんによる写真ACからの写真

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